当研究室では、 Transforming growth factor-β(TGF-β)ファミリーに属する細胞の分化・増殖因子であるアクチビンやフォリスタチン、Bone morphogenetic protein (BMP)、Growth differentiation factor (GDF)などの生体内機能を解析し、病気の原因や生命現象の謎を繙いています。
最近では、肝臓から分泌されるアクチビンEが、へパトカインとして褐色脂肪・ベージュ脂肪を活性化させ、取り込んだエネルギーを熱として消費させることを発見しました(図)。肝臓でアクチビンEを過剰発現するマウスでは体温が高く、インスリン感受性も亢進していることが分かりました。一方、アクチビンE欠損マウスではベージュ脂肪細胞の減少による寒冷不耐性を認めました。培養した褐色脂肪細胞を用いた実験においても、アクチビンEは熱産生性タンパク質であるUcp1の発現を増加させました。このアクチビンEの作用は、糖尿病をはじめとする様々なメタボリックシンドロームの原因となる肥満の治療薬開発に貢献できる可能性があります。現在、以下の研究課題に取り組んでいます。
(1)褐色・ベージュ脂肪細胞活性化機構の解明
体内の褐色・ベージュ脂肪細胞を活性化させ、余分なエネルギーを消費させるという抗肥満戦略は、世界中の研究者が取り組んでいる課題です。褐色脂肪細胞・ベージュ脂肪細胞を活性化できるアクチビンEのシグナル伝達系を明らかにし、このシグナル伝達因子をターゲットにした抗肥満・メタボリックシンドロームの創薬を目指しています。
(2)肥満・メタボリックシンドロームに対するモデルマウスの開発
アクチビンE(褐色脂肪細胞・ベージュ脂肪細胞を活性化させる抗肥満因子)が欠損したマウスに、高脂肪食給餌などのストレスを与えることにより、肥満・メタボリックシンドロームを発症するモデルを作製しています。今後、このモデルを使用して、メタボリックシンドローム関連疾患の予防や治療法の開発を目指します。