タンパク質の分子的な機能と立体構造は密接に関連しており、分子的な機能を理解する上で立体構造を観察することは非常に重要です。タンパク質の立体構造観察は一般的にはコンピュータグラフィックスを使って行います。タンパク質は多数の原子からなる非常に複雑な分子であるため、観察したい内容に合わせてさまざまな表現方法が考え出されています。立体構造の観察では、それらを適切に切り替え、さらに観察したい部位が見やすいように表示する必要があります。また、観察する上では、前もって理解しておかなければいけないタンパク質に関する基礎的な知識も多く存在します。これらのことから、初学者にとってタンパク質の立体構造観察はハードルが高いという問題があります。
近年、スマートフォンを利用したヘッドセットや比較的安価なゲーム機器が登場したことにより、VRがより身近なものになってきています。VRを使って仮想空間に没入することにより、単にコンピュータグラフィックスをモニタに表示するだけとは異なる、実際に目の前にあるかのような体験が可能になっています。
塩生研では、VR上でタンパク質を操作できるようにすることで、古典的な分子モデルのような手にとって観察できるソフトウェアを開発することで、タンパク質について学ぶ人の理解が促進される教材を提供することを目指しています。