選択的スプライシングがタンパク質の機能や立体構造に与える影響の解析

選択的スプライシングとは、未成熟mRNAのどの領域をエクソンとするか(逆に言うとイントロンとしてどこを切り出すか)を変えることにより、1つの遺伝子から塩基配列の異なる複数種類の成熟mRNAを作り出す機構である。ヒトゲノムが決定した時に、予想以上に遺伝子数が少なく、線虫やハエに比べて体の複雑さの割に遺伝子数の差が小さいことが明らかとなった。同時期に、それまではごく限られた遺伝子だけで見られる例外的な現象だと思われていた選択的スプライシングが、非常に多くの遺伝子で起こっていることも明らかとなり、高等真核生物では、遺伝子数が少なくとも、選択的スプライシングが起きることにより生物学的な複雑性が生じているという考え方が一般的となった。

つまり、遺伝子が少なくとも、mRNAの転写の後にイントロンの場所を変えてやれば遺伝子が多数あることと同じような効果を示すという考え方である。この説は非常に魅力的だが、少し疑問が残る。選択的スプライシングによりいろいろな種類のものが作られるのはあくまでも成熟mRNAである。大部分の遺伝子は、タンパク質に翻訳されて初めて機能するため、いろいろな種類の成熟mRNAが翻訳され、遺伝子がたくさんあるのと同様に異なる機能を果たしているかは保証されない。そこで、選択的スプライシングによりできる成熟mRNAがどんなタンパク質をコードしているのか?、また、そのタンパク質はどんな機能を果たしそうなのかを解析していくことを興味として研究を行っている。