イネが持つ病害抵抗性を制御する新規転写因子の探索と機構解析
植物による病原菌認識と免疫反応誘導にはPAMPs(Pathogen-associated Molecular Patterns)と呼ばれる病原菌が共通してもつ分子群が関与する。これまでの我々の研究で、イネはイネ褐条病原細菌Acidovorax avenaeの鞭毛構成タンパク質であるフラジェリンや翻訳伸長因子であるEF-Tu(Elongation factor Tu)のような分子をPAMPsとして認識し、植物免疫反応を誘導することで病害抵抗性を示すことが明らかになった。この様な病害抵抗性機構を明らかにするため、これらPAMPsを処理したイネにおいて蓄積するタンパク質をプロテオーム法によって解析したところ、フラジェリンやEF-Tuを処理したイネではシステインエンドペプチダーゼであるPR7やキチナーゼであるPR8が蓄積することが示された。さらに、PR7とPR8を恒常的に過剰発現するイネを作製したところ、イネ白葉枯病菌Xanthomonas oryzae pv. oryzaeに対して病害抵抗性を示すことが明らかとなった。そこで、PR7とPR8の発現を制御する転写因子を明らかにするため、フラジェリンやEF-Tu処理によって発現が上昇する遺伝子を44KイネオリゴDNAマイクロアレイで解析したところ、5個の転写因子をコードする遺伝子を同定した。これらの転写因子の中で、PR7またはPR8遺伝子の発現を制御する転写因子を選抜するために、それぞれの転写因子を発現するベクターとPR遺伝子プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したベクターをイネプロトプラストに同時導入し、導入16時間後におけるルシフェラーゼの発光量を測定した。その結果、OsNTF1 (NAM domain-containg transcription factor) がPR7およびPR8遺伝子を特異的に発現誘導することが明らかになった。以上のことから、OsNTF1はPR7,PR8の転写を活性化することが示された。
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