タンパク質の低分子結合部位予測法の開発

タンパク質の立体構造は、そのタンパク質の生化学的な機能を反映していると考えられている。タンパク質の立体構造が実験的に決まると、それまでに「わかっていた」そのタンパク質の機能が立体構造に基づいて明快に説明される場合が多いが、何の予備知識もなくタンパク質の立体構造だけが与えられたとしても、そのタンパク質の機能が何なのかを当てることは難しい問題である。なお、ここでの「予備知識」とは、すでに機能がわかっているタンパク質と似ているということを含む。

現在、2000年代に行われた「構造ゲノムプロジェクト」によって、そのような機能の予備知識の無いタンパク質(これ以降、機能未知タンパク質と呼ぶ)の立体構造がたくさん決められている状況である。これらの機能未知タンパク質は、立体構造が決められても、結局生体内でどんな役割を持っているかがわからないことが問題である。そこで、これまでに立体構造が決定され、他分子との結合部位がわかっているタンパク質の情報を用いて、立体構造しかわかっていないタンパク質の機能を推定することがこの研究の目標である。

現在は、結合する化合物(低分子)がわかっている場合に、その低分子がタンパク質のどこに結合するかを推定する方法の開発を行っている。特定の低分子もしくはその類似低分子について、それらの結合に関わっているアミノ酸残基の種類を調べると、結合に関わっていないタンパク質表面とは異なる傾向が見られる。この傾向に基づいたスコア関数を開発することで、低分子の結合に関わるアミノ酸残基を予測している。